和歌山こどもまんなか応援団

三洋建設株式会社 事例インタビュー

総合建設業を営む三洋建設株式会社では、トップによる継続的な発信や業務ローテーションによる属人化解消などに取り組んだ結果、2025年度に男性育休100%達成を実現しました。川口健太郎代表取締役社長(写真左)と、育休を取得された総務部の中尾さん(写真右)にお話を伺いました。

三洋建設株式会社


インタビュアー:和歌山県庁 子育て社員応援アドバイザー 大畑愼護

◎育休取得の後押しとなったもの

大畑:中尾さんは、第三子の誕生を機に初めて育休を取得されました。取得のきっかけからお聞かせください。

中尾:私は事務系なのですが、それよりも、技術系の社員が育休取得第一号になることに意義があると考えていたので、当初は私が育休を取るという選択肢は全く念頭にありませんでした。ただ、大畑さんの講演をお聞きし、育休取得を直接勧めていただいたことが大きな転機となりました。

大畑:トップである社長からの声かけも後押しになったとお聞きしています。

中尾:社長をはじめ全社的に後押ししていただく状況となったので、育休に向けての準備も問題なく進めることができました。

◎ポイントは「入念な準備」と「分割取得」

大畑:休業中の仕事の進め方など、どのように準備されたのでしょうか。

中尾:事前に思いつく限りの申し送り事項をLINEで共有したほか、総務部のメンバーには「何かあれば連絡してほしい」と伝えました。それ以前から属人化している業務に関しては2人以上で対応できるように取り組んでいたので、基本的には問題なく回る状況ができていたと思います。

大畑:育休中にトラブルなどは起きなかったのでしょうか。

中尾:育休中は、急な対応を要する出来事は起きませんでした。特に、今回は育休を分割取得し、途中で出社したときに業務に対応できたのも大きかったと思います。もともと育休は通しで(まとめて)取得しなければならないと思い込んでいましたが、制度について詳しく学んだことで「分割取得もできる」と知りました。ですので、育休に入る前から、ある程度は問題なく進められる見通しがついていたと思います。

大畑:育休を取得したことによる気づきがあれば教えてください。

アドバイザー・大畑

中尾:妻からは「出産直後の大変な時期に取ってほしかった」と言われました。確かに、取得のタイミングしだいでもう少しサポートできる部分があったのではないかと思い、その点は教訓として後輩に伝えていければと考えています。そんな中でも、育休の後半には妻が自由に外出できる時間をつくることもでき、その点は良かったと感じています。

また、夫婦それぞれの両親に対して本当に深い感謝が芽生えました。それぞれの両親が隣町に在住していることもあり、第一子誕生のときからいろいろな場面で子育てをサポートしてもらってきました。今回育休を取ることで、改めて「自分は恵まれていた」と痛感しました。

こどもたちの写真

大畑:これから育休取得を考えている方へのメッセージをお願いします。

中尾:育休を取ることで妻や子どものためにできることがたくさんあります。特に産後8週間の大事な時期にぜひ育休を取ってほしいと思います。また、出産予定はある程度事前に見通しがつくので、社内で早めに意思表示をすることも大切です。それによってお互いに余裕を持って準備できるようになります。

◎男性育休がもたらす効果

大畑:ここからは川口社長にお伺いしたいと思います。まずは男性育休を推進しようと思ったきっかけはどこにあったのでしょうか。

川口:自分自身の過去を振り返ったとき、育休を取るという発想はなかったのですが、妻から「あのとき大変だった」という話を今でも聞き、「育休をとってサポートできていたら」と思うこともあります。家庭が健全であれば仕事は順調に行き、逆に家庭が崩れると仕事にも悪影響が及びます。家庭と仕事の両方を大切にする上では、ぜひ社員に育休を取得してほしいと考えました。

大畑:今回、中尾さんの育休取得に向けて、どんな働きかけやサポートをしましたか?

川口:私がサポートしたのは総務部長への働きかけです。それ以前から仕事が属人化していることに危機感を感じていたので、3年ほど前からジョブローテーションに取り組んでもらいました。当初から育休取得を想定していたわけではないですが、今回引き継ぎを受けた社員は、ジョブローテーションによって中尾君の業務を経験していたため、結果的に男性育休を取りやすい環境づくりにもつながったと思います。それでも特に中尾君の場合は、本人が丁寧に引き継ぎをしたことも大きかったのではないでしょうか。

大畑:これまで実績がないところからの育休100%は誇るべき成果だと思います。これから育休を経験した中尾さんに期待することはありますか。

川口:もちろん家庭を大切にしながらも活躍し続けてほしいことと、後に続く人のために相談に乗ったりアドバイスをしたりしてほしいと期待しています。社内にはまだ男性育休の理解が十分とはいえない状況がありますが、1人が変われば大きな変化につながるはずです。

川口代表取締役社長・総務部の中尾さん

◎みんなが1つになる職場を作りたい

大畑:これから目指す職場の理想像についてお聞かせください。

川口:みんなが1つの方向を目指して歩むのが理想です。中小企業はそこが強みになりますし、そこがないと生き残れません。最初にお話したように、家庭がうまくいけば仕事もうまくいきますから、男性育休は生産性を向上させるための1つのオプションになると思います。

大畑:育休を取得するかどうかで悩んでいる方に、どんなメッセージをお伝えしたいですか?

川口:取るか取らないかで悩むなら、取ったほうが後々家庭の幸せにつながると伝えたいですね。1週間の仕事は職場内で引き継ぐことができますが、1週間の育休は他の人に代替することができません。仕事は、やり方しだいでまだまだ時間を作り出す余地があるはずです。

大畑:今後は育休だけではなく、病気の治療や介護を理由に休む方も出てくると予想されます。今回の男性育休を、誰が休んでも回る職場づくりの第一歩にしていただけばと思います。

川口:そうですね。休んでも回る職場を作ることは、人を育成するチャンスにもなります。これから、お互いに支え合える組織づくりを進めていかなければならないと考えています。

大畑:本日はありがとうございました。